工事進行基準とは?収益認識基準での扱いと、月次の売上を原価進行率で計上する方法
工事進行基準とは?――完成を待たずに、進み具合に応じて売上を計上する
工事進行基準(こうじしんこうきじゅん)とは、工事の収益(売上)と原価を、工事の進み具合に応じて各期に分けて計上する会計処理です。これに対して、工事が完成し引き渡した時点でまとめて計上する方法を工事完成基準と呼びます。
何年もかかる工事を工事完成基準で処理すると、完成した期にだけ大きな売上と原価が立ち、それまでの期は工事が進んでいても売上が出ません。工事進行基準は、この期ごとの業績と、実際の工事の進み具合とのずれを小さくするための考え方です。
進み具合の測り方――原価比例法
進み具合(進捗度)の測り方としてよく使われるのが原価比例法です。決算日までに実際にかかった原価が、工事全体でかかると見込む原価(見積総原価)の何割にあたるかを進捗度とし、請負金額にその割合を掛けて、その時点までの売上を求めます。
- 進捗度 = これまでにかかった原価 ÷ 見積総原価
- その時点までの売上 = 請負金額 × 進捗度
- 当期の売上 = その時点までの売上 - 前期までに計上した売上
分母になる見積総原価が実態とずれていると、進捗度もずれます。工事進行基準を正しく使えるかどうかは、工事全体の原価を見積もった計画(実行予算)がどれだけ最新かにかかっています(実行予算とは)。
収益認識基準での扱い
日本の会計基準では、2009 年 4 月 1 日以後に始まる事業年度から適用された「工事契約に関する会計基準」(企業会計基準第 15 号)が、工事進行基準と工事完成基準の使い分けを定めていました。成果の確実性が認められる工事には工事進行基準を、そうでない工事には工事完成基準を適用する、という考え方です。
その後、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第 29 号)が 2021 年 4 月 1 日以後に始まる事業年度の期首から原則として適用され、工事契約に関する会計基準は廃止されました。現在は、工事契約についても次のように考えます。
- 一定の期間にわたって充足される履行義務にあたる場合は、履行義務の充足に係る進捗度を見積もり、それに応じて収益を認識する。進捗度の見積りには、発生した原価にもとづく方法(インプット法)なども使われる
- 進捗度を合理的に見積もれないが、発生する費用は回収できると見込まれる場合は、回収できると見込む費用の額で収益を認識する(原価回収基準)
- 工期がごく短い工事は、一定の期間にわたって認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することも認められている
「工事進行基準」という会計基準上の名前は無くなりましたが、進み具合に応じて収益を認識する考え方は、形を変えて引き継がれています。現場や経理では、今も「進行基準」と呼ぶことが少なくありません。
なお、収益認識基準が強制されるのは主に会計監査を受ける会社で、中小企業では従来の会計処理を続けることも認められています。また法人税では、一定の要件にあたる長期大規模工事について、工事進行基準の方法で計上することが定められています。自社がどの方法で計上するかは、顧問の会計士・税理士にご確認ください。
Sitrom-CCでの工事進行基準の扱い
■工事ごとに売上基準を持つ
Sitrom-CCでは、工事情報に「売上基準」(完成基準/進行基準)を工事ごとに登録します。同じ会社の中で、工事によって計上の方法を分けられます。
■進行基準振替で、月ごとの売上をまとめて計上する
進行基準振替の画面で対象月を選ぶと、その月に計上すべき工事売上を、工事をまたいでまとめて算定し、起票します。1 工事ずつ売上を手で入れる必要はありません。
- 進行基準の工事(未完成) … 受注金額 × 原価進行率(請求基準の原価合計 ÷ 実行予算の合計。100% で頭打ち)から、前月までの計上額を差し引いた額を当月の売上とします
- 完成基準の工事(未完成) … 分割して売上を入れる場合に、当月の額を一覧で入力します(上限は、まだ売上にしていない額)
- 完成した月 … 進行基準・完成基準とも、まだ売上にしていない残りの額を計上します
一覧には、受注金額と並んで請求済額・売上済額が表示されるので、今月いくら計上するかを確かめてから実行できます。受注金額や原価は対象月の月末時点の値を使います。
計上のしかたは 2 つから選べます。前月までとの差額を売上伝票に計上する方法(既定)と、累計額を月末に整理仕訳で計上して翌月 1 日に振り戻す方法です。どちらを使うかは会社ごとに設定します。
■作った伝票を守る
進行基準振替で作った伝票は、ほかの画面から編集・削除できないようにできます。実行した人と日時が記録され、内訳で確かめられます。締めの済んだ月は、再実行も取消もできません。
工事が完成したときの原価の振替(未成工事支出金から完成工事原価へ)は、工事完成振替の画面で行います(未成工事支出金とは)。
会社ごとに違う進行基準の回し方と、Sitrom-CCのカスタマイズ
進み具合に応じて売上を計上すると決めても、どの工事に適用するか、毎月か四半期か、どんな仕訳で計上するか、原価が固まる前に計上してよいかは会社ごとに違います。Sitrom-CCで実際に作り込んできた例を、架空の会社に置き換えてご紹介します。
■A社(部門ごとに月次の決算を締める)――原価が固まってから、洗替で計上する
毎月、部門ごとに原価を固めてから進行基準の売上を計上する会社です。A社向けには、月末に出来高の累計を整理仕訳で計上し、翌月 1 日に全額を戻す「洗替」の方式にしました。受け取った工事代金(未成工事受入金)を超えて進んでいる分は、契約資産として計上します。さらに、部門の工賃の査定が申請され、労務費・工賃の伝票がそろうまでは計上できないようにして、固まる前の原価で売上が立たないようにしています。
■B社(進行基準の工事は一部の大型工事だけ)――四半期ごとに差額を計上する
ほとんどの工事は完成基準で、工期の長い大型の工事だけを進行基準で計上し、それも月次ではなく四半期の末に計上している会社です。B社向けには、前回までに計上した額との差額を計上する方式を使い、実行の間隔が毎月でも四半期でも、累計の差で正しい額が出るようにしました。進行基準の工事とそれ以外を、工事ごとの売上基準で分けて扱います。
■C社(プラント工事で、見積の段階から収益認識を考える)――工事損失の見込みを年度に割り振る
受注の前の積算の段階で、その工事を完成基準と進行基準のどちらで計上するかを決めておく会社です。C社向けには、積算の条件に収益認識の基準を持たせ、工事損失の見込額を算定する帳票で、完成基準なら工期の終わる年度に、進行基準なら計画の進み具合に応じて各年度に割り振るようにしました。
■D社(部署によって計上の方法が違う)――部署ごとの決まりに合わせる
部署によって、完成基準だけを使うところと、進行基準を使うところが分かれている会社もあります。工事ごとに売上基準を持つ仕組みを土台に、部署ごとの決まりに合わせた初期値や入力のしかたを作り込むご相談も承ります。
業務の進め方は会社ごとに違うので、Sitrom-CCは標準の機能をそのまま押し付けず、貴社のやり方に合わせて画面・帳票・計算を作り込みます。どの工事にどの基準を適用するかは顧問の会計士・税理士とご相談のうえで、決まった方針に合わせて計上の流れを組み立てます。いまの月次・決算の回し方を、お問い合わせよりお聞かせください。
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月次の売上計上をどう回すか、いまの計上方法をどう移すかのご相談は、お問い合わせより承ります。