同じ工事なのに、原価がちがって見える。日報基準と請求基準、ずれが生まれる3つの場面
同じ工事について、現場が言う原価と経理が出す原価が食い違う。よくある話ですが、どちらかが間違っているとは限りません。 多くの場合、両者は「違う出どころの数字」を見ています。
建設業の原価は、発生した瞬間に金額が決まるものばかりではありません。自社社員の労務費は、日報に出面を入れればその日のうちに積み上がります。一方、外注費や材料費は業者の請求書が届いて、それを登録するまで金額が決まりません。 「いま分かっている原価」と「請求書まで届いた原価」は、常に別のものです。
この記事では、架空の工事を例に、原価がずれて見える 3 つの場面を並べます。数字は説明のために作ったもので、実在の工事のものではありません。

例に使う工事(架空)
- 請負金額 … 2,000 万円
- 実行予算(原価) … 1,600 万円(材料費 600/労務費 400/外注費 500/経費 100)
- 見ている時点 … 8 月末
費目は説明のために 4 つにまとめています。実際のSitrom-CCの標準では、労務費を「自社の労務費」と「労務外注費」に、外注費を「労務外注費(常用)」と「請負外注費(一式)」に分けて持ちます。
場面① 日報は入っているが、請求書はまだ届いていない
自社社員の労務費は、日報の出面に工数と単価が入れば、その日のうちに積み上がります。一方、外注費や材料費は業者の請求書が届くまで金額が確定しません。
同じ 8 月末でも、次の 2 通りの数字が出ます。Sitrom-CCの工事台帳では、前者を 日報基準、後者を 請求基準 と呼びます。
| 費目 | 実行予算 | 日報基準の原価 | 請求基準の原価 |
|---|---|---|---|
| 材料費 | 600 | 430 | 380 |
| 労務費 | 400 | 320 | 320 |
| 外注費 | 500 | 360 | 180 |
| 経費 | 100 | 60 | 45 |
| 合計 | 1,600 | 1,170 | 925 |
差は 245 万円。これは間違いではなく、まだ請求書が届いていない分です。労務費だけは自社の日報が出どころなので、両者が一致しています。
ここで大事なのは、どちらか一方を選ぶことではありません。「いまいくら進んでいるか」を知りたいときは日報基準、「支払う金額はいくらか」を知りたいときは請求基準、と目的で使い分けることです。目的を言わずに「原価はいくら?」と聞くから、答える人によって数字が変わります。
場面② 発注は済んでいるが、まだ請求が立っていない
上の表の外注費 360 万円のうち、請求書が届いているのは 180 万円です。残りは「発注済みで、これから請求が来る分」にあたります。
この分をどう扱うかで、工事の見え方は変わります。
- 数えない … 支払の実績としては正しい。ただし、予算の残りが実際より多く見える
- 数える … 予算の残りを正しく見られる。ただし、支払額としては未確定
予算超過に早く気づきたいなら、後者で見る必要があります。 発注書を出した時点で、その金額はもう戻ってきません。請求書が届いてから気づいても、打てる手は残っていないためです。
逆に、資金繰りの話をしているときに発注済みの分まで足してしまうと、今月の支払額を多く見積もることになります。同じ金額でも、何を判断したいかで足すかどうかが変わります。
場面③ 同じ支出を、二度数えてしまう
もっとも気づきにくいのがこれです。現場で立て替えた経費を日報に登録し、あとで領収書をもとに経理でも登録すると、同じ支出が 2 件になります。
上の例で言えば、経費の日報基準 60 万円のうち 12 万円が二重に入っていれば、本当は 48 万円です。原価は多く、利益は少なく見えます。しかも「金額が大きすぎる」という形では現れないため、予算と比べても気づけません。
同じことは、次の組み合わせでも起きます。
- 現場が日報に登録した材料と、仕入先の請求書
- 協力会社の出面と、その会社からの請求書
- 立替経費の精算と、法人カードの明細
いずれも「現場から見た記録」と「取引先から届いた記録」が同じ支出を指しています。二重計上を防ぐには、どちらを原価の正とするかを費目ごとに決めておく必要があります。決めていない状態でどちらも入力すると、多い月と少ない月がまだらに生まれ、原因を追う作業が毎月発生します。
3 つの場面を、1 枚に並べる
自社の運用を点検するときの表です。費目ごとに埋めてみてください。
| 費目 | 日報基準の出どころ | 請求基準の出どころ | 二重計上が起きうる組み合わせ |
|---|---|---|---|
| 材料費 | 日報・発注 | 仕入先の請求書 | 日報の材料 × 請求書 |
| 労務費(自社) | 日報の出面 | (同じ) | ― |
| 外注費 | 発注・協力会社の出面 | 協力会社の請求書 | 出面 × 請求書 |
| 経費 | 日報・立替精算 | 領収書・カード明細 | 立替精算 × カード明細 |
2 つの出どころが同じ費目は、ずれません。 違う費目だけが、ずれる可能性を持っています。埋めてみると、自社でずれるのはたいてい 2 費目ほどに絞られます。
Sitrom-CCでは、どう見えるか
Sitrom-CCの工事台帳は、費目ごとに次の 4 つを同じ表に並べます。 どれか 1 つに寄せて単一の数字にするのではなく、並べて見られる形です。
- 予算 … 実行予算の金額
- 発注額 … その費目に対して発注済みの金額(外注発注と材料発注の合算)
- 原価(日報) … 日報から積み上げた原価
- 原価(請求) … 請求から積み上げた原価
さらに、この表には予算に対する利益額と利益率が並びます。場面②で述べた「発注済みの分まで数えるか」は、発注額の行を見るかどうかで切り替えられます。予算の残りを金額で見たいときは、実行予算の画面に発注額・発注残高・仕入額が費目の明細ごとに並びます。
画面を開いたときにどちらの基準を先に見せるかは、会社ごとに設定できます。利用者は画面上でいつでも切り替えられます。
費目もお客様ごとに設定できるため、「リース品費」「燃料費」のように自社の呼び方のまま持てます。関連する機能は工事台帳の記事と日報の記事でご紹介しています。
どこまでを日報基準に含めるか、どの費目をどちらの正とするかは、運用の設計しだいです。製品を入れれば自動的に決まるものではありません。 上の表を埋めて「自社では何を正とするか」を決めるところが、実際にはいちばん効きます。
まずは、費目ごとに「正はどっちか」を決めるところから
原価がずれて見えること自体は、避けられません。避けられるのは、ずれの理由を説明できない状態のほうです。
「現場と経理で数字が合わない」「二重計上を毎月探している」「予算超過に気づくのが遅い」といったご相談から承ります。上の 4 費目の表を途中まででも埋めてお持ちいただけると、どこで運用を変えれば済むのか、システムで持つべきなのはどこかを、具体的にご案内できます。
ご相談はお問い合わせより承ります。